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「真面目さ+ユーモア」が人聞の魅力になる

人間関係を潤わせ、またスムーズにするものといえば、ユーモアであろう。

私は常々、日本人には本当の意味でのユーモアがないと思ってきた。

これは、日本人が「テンション(緊張)民族」といわれるほどに真面目人間が多いからではないかと思ってきた。

実際、世界中を歩いて各国の人々と比べると、私もつくづく「日本人は何と真面目なんだろう」 と感じることがある。

この真面目きが、人間関係を悪くしている原因ともいえる。

つまり、常にギスギスした関係をつくっているために、何かというと小さなことで衝突したり悩んだりするのではないということだ。

 

日本人の「真面目さ」は、確かに経済発展の原動力になったし、日本が大国になるための力になってきた。

だが、この真面目さは必ずしももろ手を挙げて歓迎できる性質のものではない。

なぜなら日本的な「真面目」には一面で融通のきかない堅苦しきがつきまとうからである。

 

一から十まで杓子定規に物事を考え、対応しようとするという融通のきかなさが、日本人の真面目さの本質でもある。

本来、真面目というのは、懸命にそのことに真正面から当たるということ であり、ときには前例をはずれてでも、事に当たることも含まれる。

だが、日本人には一つの枠の中で、その決まりを汲々として守るという意味の真面目人聞が多い。

そうした日本人的な真面目さはいささか問題あり、と考えてきた。

懸命にやるのはいいが、心に余裕というものがないからである。

先年もある銀行の支庖長にト ップになった行員が、業績の急激な悪化に焦って、銀行を舞台にした大型詐欺事件にくみして、その地位を追われることになってしまった。

 

これなども、一所懸命ということを発揮する場面を間違えたからであろう。

会社のためと思いな がら、結局は会社をダメにすることをしていたのである。

もっといえば、そうして一所懸命を発揮する場面を間違えていることにも気づかないほどに、心に余裕というものが持てなかったともいえる。

 

ともかく 「一所懸命」の四文字にとらわれて、ねじり鉢巻きの猪突猛進は、さまざまな意味で悲劇につながりやすい。

こういう真面目な人が会社で上司として働いていると、よもや自分が部下から嫌われているとは考えない。

むしろ自分は常に全力を尽くして会社のために懸命に働いているのだから、部下もそれなりに評価してくれているはずだと考えている。

 

そして、評価しない人を蔑んだり憎んだりする。

そんなタイプの上司であるKさんが、ある日、他社の友人と待ち合わせ。

小料理屋に行った。

 

友人から遅れるとの伝言が入っていた。

小部屋でしばらく待つことにして酒を飲んでいると、隣室の数人のグループが自分の部下であることがわかった。

声をかけようとしたところ、部下たちが会社の幹部たちの人物評価をしはじめた。

 

なかなか手厳しいことをいうKさんは落ち着かない気分になった。

しかし、自分としては真面目に仕事をやってきたつもりだし、部下も口やかましい上司を立てて、みなよくやってくれているから、ほかの幹部ほどの厳しい評価をすることはないと思っていた。

むしろかなり高い評価をするはずだという気持ちがあった。

 

ところが、それは甘い期待であった。

誰にもましてKさんへの評価は厳しかったのだ。

部下たちは、まるで日頃のうっぷんを晴らすかのようにKさんのことを「八方美人」「無 能」「冷血」とののしったのである。

 

腹に据えかねたKさんは、よほど隣室へ「いい加減にしろ」といって怒鳴り込もうと考えたが、危ういところで踏みとどまった。

盗み聞き、と受け取られるのを恐れたからである。

Kさんはすぐ断りを入れて店を出た。

 

淋しかったが、これも自分の不徳のゆえと考えた。

また、考えてみれば自分も若い頃は、先ほどの部下のように上司の噂話をさかなに酒を飲んだ。

上司批判は単なるストレス解消だったのだ。

 

半分は当たっていて半分ははずれている。

真面目一方の自分が部下にどんなふうに受け取られているかがわかっただけでもよかったと考えたら、Kさんの気持ちはかなり楽になった 。

真面目であることは大切だが、そこにもうひと味、精神的余裕。

 

つまりユーモ アの精神というものを加味してみると、真面目さにも実にいい味が出るのではなかろうか。

 

 

どうしたらユーモア精神が養えるか

 

では、 どうしたらユーモア精神を養うことができるのだろうか。

ただし、ここでちょっといっておきたいのは、 ここで言うユ ーモアというのは、決して「ふざけた精神」の所産ではなく、 駄洒落のことでもないということだ。

このあたりを勘違いしている人が実に多い。

 

では、本当のユーモアとは何かと問われても、これがなかなか一言でズバリということは難しい。

それで、ユーモアやウイットの本場と言われるイギリス人のユーモアを紹介してみよう。

第二次世界大戦で ロンドンがドイツ軍の爆撃を受け、あるデパートの入口付近が破壊きれた。

 

それでも、デパートは翌日もいつものとおり営業することにした。

そして、デパートは入口に、こんな張り紙をしたのである。

「当店は本日も営業いたします。入口を広げてお待ちしております」

 

破壊きれた入口を「広く開けて」と酒落のめしたところが、何ともたくましいユーモア精神ではないか。

この例だけで、ユーモアの何たるかを言い尽くすことはできない。

だが、ユーモアといえる言葉や精神をかなりリアルに想像することはできるのではないかと思う。

 

ところが、今の話と同じ時期、日本人はどう生きていたかというと、これが何とも淋しいものだ。

私などもそうだ つたのだが、「歯を見せるな」と育てられ、生きていたのであ る。

つまり、笑顔など不届き千万の非国民というわけである。

 

なるほど、日本のように狭い国土に多くの人聞がひしめいて生活していて、しかも、その国土が戦禍で危機に瀕しているとき、笑うなどという行為は不謹慎に見えることだろう。

その理屈はわからないではない。

しかし、笑い顔を見せなければ戦争に勝てるかというと、そういう問題でもないだろう。

 

むしろ、悲しいとき、苦しいときにこそ、その苦しきを吹き飛ばすために笑うべきである。

欝病という精神の病があるが、その初期状態に、笑いを忘れるという症状がある。

つまり、精神が危機に瀕しはじめると、人は笑いというものを忘れがちなのである。

 

どこを見渡しても破壊された重苦しい風景しか広がっていない。

そんな風景の中にあって、笑いはその風景が与える重苦しきを一時期でも忘れさせてくれる。

だから、また頑張ろうという気持ちを起こさせる。

 

ところが、笑うことを禁止されると、はけ口がなくなり、風景はいつまでも重苦しくのしかかってくるのみである。

笑うことは、精神の安定を保つために必要なことであり、また活力を生み出すための重要な技術なのではなかろうか。

要するに、 ミーハー的な人気取りではなく、真に人に好かれ人が集まるというのは、このように「真面目さ+ユーモア」で精神のバランスを保ち、余裕を持ってものを考え、人に接するところに生まれるのであろう。

 

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