人間関係

上手にお世辞を言う人と言わない人の違い

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お世辞と包丁は使いよう

よく引き合いに出される論詰巴の言葉に「巧言令色鮮失仁」といって、 口先だけうまくて、こびへつらうことがうまい人は、仁の心に欠けるといわれる。

過度のお世辞やおべっかを使うのは、人間性を疑われることになり、あまりよくないというわけである。

確かに、お世辞やおべ っかばかりを使う人は、いろいろと人から妬まれたり、蔑まれたりしがちである。

しかし、本当にお世辞やおべっかは悪いものなのだろうか。

むしろ私は、お世辞の効用 といったものを考えたいと思っている。

昔から「嘘も方便」というが、嘘も使い方によっては必ずしも悪いことではないと思っている。

 

たとえば、精神科では、ブラシーボといって、偽の薬を患者きんに渡すことがある。

本当は薬など必要ないのに、患者きんが薬を処方しないと満足してくれないような場合カルシウムに乳糖を混ぜたようなものを処方することがある。

つまり、医者は嘘をつくのである。

 

しかし この嘘は患者きんをだまして金品を奪おう とか、 そうしたよくない下心があるわけではない。

あくまでも患者さんによかれと思ってつく嘘なのである。

嘘もお世辞も、 いわば両刃の剣といっていい。

使い方を誤ると、それは毒になる。

しかしうまく使えば、 それは人間関係を滑らかにするための潤滑剤ともなりうる。

だいたい、誰もが本当のことしかいわない世界など、窮屈このうえないであろう。

 

人が 酌なく他人の欠点はかりを言い立てていると、人間関係は途端に破綻をきたす。

もちろん、嘘ばかりつくのは考えものだが、かといって正直すぎるのも困るのである。

つまり、正論な嘘というものは、逆に人間関係をうまく保つのに必要だということになる。

 

アメリカにかつてカルビン ・クーリ ッジ という大統領がいた。

この人はとても無口な人で、かつ真面目人間であったようである。

ところが、そんな大統領が、ある日秘書に仕事の面で注意しなければならない場面があった。

 

そのときクーリッジは、まず「あなたは趣味がいいが、今日の服装はいちだんと素敵 だ」と相手を誉めたという。

そしてそのあとで、「それで、あなたがもう少しばかり文書の整理に気をつけてくれれば申し分ないのだが…」と注意し、「あなたのような趣味のいい秘書がいることは、 私の誇りなのだから、これからも頑張 ってもらいたい」と付け加えたということでした。

クーリ ッジは人を誉めてから使えという鉄則を知っていたということになる。

 

ことによく知らない人とつきあうような場合、その人と早めに打ち解けて親密になるためのコツは、やはりまずは相手のことを誉めることではないだろうか。

つまり、相手のご機嫌を取り結び、相手をいい気持ちにさせることである。

そこには当然、お世辞というも のの技術が光ることになるわけである。

 

 

人を楽しませることとプライドのバランスをどうとるか

 

ただし、あまり見えすいたお世辞をいうのはいけない。

虚実皮膜の精神ではないが、 世辞のようでお世辞でないといった感じのものがいいのではないかと思ったりする。

そしてもちろん、いいお世辞をいうためには、事前にきちんとした調査が必要である。

 

ある人が友人の家に招待されたとき、学校から帰 ってきたのだろう、小柄な女性が挨拶をした。

「妹です」と紹介されたので、「まあ、ずいぶん大きな妹さんがいらっしゃるのですね。中学生ですか」とお世辞をいった。

すると、友人はいかにもつらそうに「いや、高校生なんですよ」と答えたという話がある。

 

これでは、お世辞どころか嫌みになってしまう。

瞬間的な判断力も必要だろう。

また、相手の余技や趣味を誉めるのは、本業とあまり関係がないので、たとえ多少間違 っても愛敬ですむこともあるが、本業のほうを話題にするときは、十分注意しなければな らない 。

 

ある人が、舞踊家と初対面のとき いかにその舞踊家の人間性を気に入ったかを知らせようとして、「君はまったくよい男だ。どうしてこんなによい人物がいるんだろう。ダンスはまずいけれど人聞は実に立派だ」といったという。

すると、その舞踊家は「なに?俺のダンスがまずいとはなんだ。お前なんかにダンスがわかってたまるか!」と怒り、大喧嘩になってしまったそうである。

本業のほうはけなすべきではないし、できるならあまり話題にしないほうが無難である。

 

かといって、腰は低ければいいというものでもない。

最初からあまりにも腰を低くしてつきあうと、かえって自分の価値を下落させることにもなりかねない。

つまり、謙遜しすぎやへりくだりすぎは、あまりよくないということだ。

 

たとえば、評論家の塩田丸男きんのエッセイに、部長の馬になった男の話が出てくる。

このサラリーマンは、あるとき宴会の席上で、部長から「馬になれ」と屈辱的な命令を下 された。

そこで、弱い立場の彼は、泣く泣く部長のいいつけどおりに馬になって、部長を乗せて歩きまわった。

 

この姿を見て、塩田さんは、そこまでやるのは男としてあまりにも惨めなのではないか、 かえって自分を、ダメにするのではないか、このことがと思ったという。

実際、 この人は、あってからは みんなからバカにされただけでなく、献身的なゴマスリのかいもなく万年係長で終わったそうだ。

したてに出ていれば人は喜ぶというのが常識のようにな っているが、人間としての最低限のプライドを破棄してまでしたてに出る必要があるのかというと、やはり疑わしい。

 

昔にテレビで、自社が抱えているタレントを売り出すために、社長以下全員の頭を剃るというパフォーマンスをやった芸能プロダクションがあった。

坊主頭になりたくないマネジャーが、そのために二人ほど急逮退職してしまったという。

その報道を見て、ある評論家が、「こういう目立ちすぎるパフォ ー マンスをや って、今まで成功した例はありません」と冷たく言い放った。

 

なるほど、何ごとにおいても行きすぎは厳禁なのだろう。

がむしゃらになることは悪いことではないが、よい意味での自分のプライドを失ってまで、献身的なサービス精神を発揮する必要はない。

へりくだりすぎは、確かに他を圧倒して自分を目立たせ、 そして相手の心をつかむことになる。

 

だが同時に、かえって自分の立場そのものを破壊してしまうことにもなりかねない。

プライドはときには邪魔なものであるが、それを完全に捨て去ることもできないものなのである。

 

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